こんにちは、まゆです。
話がとぎれとぎれになってゴメンなさい。ほんとうはもっと短くお話するつもりだったのだけど。相変わらず文章を要領良くまとめるのが苦手で。このままでは日記を休んでた時の報告ばかりでちっとも前に進みません。でもそれこそ順を追って書いていかないとこれから書く日記が注釈だらけになりそうなので。もう少しがまんしてお付き合いくださるとありがたいです。
前回の日記で沢野さんが参加した教室ではわたしが見られて感じてしまう女の子だっていうことがバレてしまっていたというところまでを書きました。本人は隠せてるつもり…というのも内心はぜんぜん自信がなく。ほんとうのところは隠せてると信じたかっただけなのかもしれないのですけど。ほんとうはそんな目で見られていたなんて。ひと前で全裸を見られるだけでも恥ずかしいのに。まさに晒しもの状態だったのだとこの時に身に染みてわかりました。
「お友だちがなんでわたしにアプローチしてこなかったのか良くわかりました。そんな変態みたいな女の子だってわかったら誰だって彼女にしようとか思わないですよね」とわたしは言いました。すごいみじめな気持ちでした。もう美術モデルとして生徒さんたちの前に立つことなんてできない。どんな風に見られているか知ってしまったからにはこれまでと同じ顔で教室に行くこともできないだろう。わたしにそんな勇気なんてないもん」って思っていました。
「勘違いしないで」と沢野さんが言いました。お友だちはわたしになにも言わないまま故郷に帰ってしまったけど。わたしのことを軽蔑したりはしてなかったって。いつもおびえたように教室に入ってきて。それでも健気に明るくふるまって。時間がくると決心したような表情をして全裸になって。震える手でタイマーを操作してリクエストされたポーズをするわたしのことを。「たまらなく可愛いい」って何度も言っていたそうです。
それまでその教室に来ていたモデルさんはもちろん演技もあるかもしれないけど。みんないかにも「こんなことなんでもない。恥ずかしいなんてぜんぜん思わない」みたいな感じで。きれいなひともスタイル抜群のひともいたけど。見ているお友だちの方もなんの感動もなかったのだそうです。「でもまゆちゃんはぜんぜん違ったんだって。ある日やってきた小さくて可愛い女の子は可哀そうなくらい恥ずかしがっていて。それでもなんとか頑張ってポーズしようとする姿に心を持ってかれてしまったんだって」と沢野さんは言いました。
「でもその女の子は大勢にひとに裸を見られて。誰が見てもわかるくらい感じてしまってたんでしょ？そんな子と付き合ったりしたらお友だちだって周りのひとから何を言われるかわからない。だからもしほんとうに好きになってくれたとしても手は出せなかったんだよ」自分でこんなことを言わなくちゃいけないこともわたしにはとても恥ずかしいことに思えました。
「あいつがなんでなにも言わずに帰っちゃったのかはぼくにはわからない。もしかしたらまゆちゃんの言うのが正しいのかもしれない。でもすごく後悔しているかもしれない。でもそのことを今考えてもしょうがないよ」と沢野さんは言います。その時わたしにはほんとうに沢野さんが知らないのか？それとも言えない事情があるのか？はわかりませんでした。わたしはそれ以上そのことを聞くのはやめて話を変えることにしました。他にも聞いておきたいことがあったからです。
もしわたしが教室のみなさんが思っているような女の子だったら沢野さんが言うみたいな『幼すぎる美術モデル』としての売り出しなんて絶対にうまくいくはずがない。だってAVやIVに出ていてそのためにいつもきれいなパイパンにしているって思われてたんだったら。SNSとかで情報を発信しても週刊誌芸能事務所に売り込んでも。契約している事務所なりからストップがかかるかもしれないし。SNS上で「この子AVで見たよ」みたいな反応が帰ってきてそれで終わりになっちゃうかもしれない。
「それについては身体検査は済んでるんだ。まゆちゃんはAV女優とかじゃないって」と沢野さんは言いました。「えっ！いつの間に？だって沢野さんが初めてわたしを見てその計画を思いついてから。わたしに話を持ち掛けるまで一晩しかなかったのに」とわたしは言い返しました。調べるにしてもどこかに問い合わせるにしても時間がなさすぎです。それからこの日までの間だって2日しか経ってないのに。
「あっ、調べたのはぼくじゃなくて。何も言わずに去っちゃった友だちなんだけどね」と沢野さん。わたしがAVとかに出るためにあそこをパイパンにしてるのでは？という話になってからほんとうにそうなのか？を調べたのだそうです。大手メーカーのももちろんだけど。そういうところは売れそうな女の子はマスコミにも情報を流したりするから。もしそうならとっくに評判になってるはずだからって。
もちろんわたしがそんなことになっているはずもないから。ロリ系専門のメーカーの作品とか。パイパンにした女の子の動画を無修正で配信する専門のメーカーのものとか。一般に公開されているサンプルや違法ダウンロードのサイトだけではわからないからと。無修正動画のメーカーに会員登録したりしていろいろ調べたのだそうです。
結果はあやしいと思った女の子はいたもののそれは人違いで。わたし自身と特定できる作品には巡り合わなかったのだそうです。「結局まゆちゃんはそういうのには出てないんでしょ？今回聞いた話からするとむしろ避けてきたみたいだしね」と沢野さん。わたしはデジタルタトゥーになるようなことだけは絶対に避けようと思ってきたことを答えました。最近は引退後に女優が希望すればネット上の作品を削除できるような法整備もされるようになってきたみたいだけど。個人で購入されたものや違法ダウンロードされたものはけっきょく取り締まりようがないのだし。
「そのこと自体は正しいと思うんだけど。まゆちゃんはそれで。美術モデルとしてヌードを見せることだけで満足なの？」と沢野さんは聞きます。その質問にわたしは答えることができませんでした。だってほんとうはもっと恥ずかしいわたしを見てほしいという気持ちはずっと持ち続けています。この日の話で沢野さんは最初思ったような怖いひとではないと分かったのだけど。だからと言ってこの願望のことがちゃんと理解してもらえるとは今はまだ思えないから。
ひととおりのお話が終わって沢野さんは改めて「幼すぎる美術モデル」のことはもう絶対にしないと約束してくれました。でも沢野さんがしなくてもおなじようなことはこれからもあるかもしれないから。こういう仕事を続けていくのならそれなりの覚悟も必要なんじゃないか？って。わたしもそのことは今回のことで現実のこととして理解できたし。今後のことはよく考えてみますと答えました。
沢野さんは「もうぼくたちはこれっきりだよね？まゆちゃんとしてはもう会いたくなんかないよね？」と聞きました。それだったらもう2度とわたしの前には現れないからって。「ほんとうは今日だって来るのは怖かったです。でもちゃんと正面から話をしてくれる沢野さんはキライではなくなりました。沢野さんに会わなかったら事実を受け入れられずにいたかもしれない」とわたしは答えました。でもまた会おうと思えるかどうかはまだわからないって。
沢野さんは「ムリしてあってもらわなくても大丈夫だけど。もし会えるなら僕は会いたい。だからその気になったらここに連絡してほしい」と言って携帯番号を書いたメモをくれました。「まゆちゃんの番号はもらわなくていいから」って。わたしはうなずいてそのメモをもらいました。その時「もしかしたらまた話をしたくなるかも知れないな」と思いました。良く見ると沢野さんって優しそうなお兄さんでした。今回のこともほんとうに悪気なくわたしのためにと思ってのことだったのかもしれません。
美術モデルのことですけど。あの時はほんとうにもうやめようと思ったのですけど。けっきょくそのまま続けています。相変わらず依頼はヌードばっかりで。あの日沢野さんに指摘されたようにわたしは緊張しまくりで会場に入って。「もうやるしかないんだ」っていう気持ちで裸になって。それから徐々にドMちゃんモードに入っていってしまって。たったひとり裸を見られているという被虐感で快感を感じ。たぶん誰が見てもわかりやすく感じてしまっています。
でもこれこそがわたしが美術モデルに求めていたことなんだとも思えるのです。それを一昨年の11月から1年半も続けてきて。そんなモデルでも許されて見て見ぬふりをしてもらってきたのだから。いつほんとうのピンチがやってくるかもしれないし。あとどれくらい続けられるかわからないのだけど。学生の間でしかできないこととして決死の覚悟で始めたお仕事なんだから。楽しめるだけ楽しもうって思っています。
これで「幼すぎる美術モデル」事件はひとまず終わりです。沢野さんとはけっきょくLINEも交換してしまいました。会うことはまずないのだけど。時々は意見を聞きたくなったりしてLINEではつながっています。なのでまた会うこともあると思うし報告するようなことがあるかも知れません。いまはわからないけど。
長くてまだるっこしい話にお付き合いくださってありがとうございました。次回は日記をやめようと思ったもうひとつの事件について書くつもりです。こうして日記を再開しているように自分なりに解決はしているのですけど。
読んでくださってありがとうございました。
ではではまたね。
まゆでした。
※ 日記に出てくる名前はぜんぶ仮名です。
