まゆの日記

大学4年生 21歳の普通の女の子です。

「幼すぎる美術モデル」のその後のこと

こんにちは、まゆです。

 

今日は5月28日の日記「幼すぎる美術モデル」の続きです。

 

沢野さんと別れた後。不安な気持ちがいっぱいになって他のことは考えられないくらい悩みました。あんな風に一方的に断ってその場を去ってしまったけど。彼は「あきらめない」「また会いに行く」って言ってましたから。この話はぜんぜん解決したわけじゃありませんでした。

 

「いったいわたしどうなるんだろう」なんどもため息がでました。そしてもしわたしが彼の言っていた「幼すぎる美術モデル」としてプロデュースされてしまったらどんなことになるんだろう?それを想像しないではいられませんでした。わたしが沢野さんの提案を受け入れた場合と。断っているのに彼が勝ってにどこかに売り込んだ場合と。

 

わたしが断り切れずに沢野さんの考える「幼すぎる美術モデル」になる道を選んだ場合。彼はわたしという低身長で童顔で一見中高生に見える美術モデルがいることをまずSNSを使って発信するつもりだと言っていました。「こんな女の子がいるのを見つけました」みたいなことから始まって「実は※※大学に通う学生さんらしいんです」というような情報などを。

 

そしてどういうやり方か?は聞いてないけど。それに対するレスやリツイートを増やす工夫も考えていると。そんなことをやりながら一方では週刊誌などにコンタクトを取って話題にしてもらったり。グラビアアイドルとかを扱ってる事務所に「興味がないか?」売り込みをかけたりするのだと。

 

もしわたしが彼の求めに応じて計画通りに行動して。その計画がある程度うまくいった場合。もし仮に週刊誌が取り上げてそれらしい取材をしてくれるとしたら。普通に考えてむこうが出してくる条件は美術モデルをしている様子を写真を撮らせることだと思います。今だと雑誌にもデジタル版とかがあるから動画付きになるかも知れません。男性週刊誌のことはネットの記事くらいでしか知らないのだけど。向こうが商売になるとしたら。それくらいは必要だと思います。

 

その記事とか写真がもしも評判になって。ほんとうにわたしのことが話題になったら。その後ってどうなるんだろう?なにか芸能界的なお仕事がきたりするんだろうか?どう考えてもそこから先が考えられないのです。もしわたしという女の子に世間のニーズがあったとしても。はじめっから裸でデビューした子のできるお仕事って所詮裸になることしかないと思います。

 

服を着てデビューした女の子が水着になったりきわどいコスプレしたりっていうことはあるかもしれないけど。その逆なんてどう考えても無理だと思います。アイドルや女優さんやバラエティタレントになりたい女の子はたくさんいて。きっとすごい競争があるに違いないから。はじめから全裸で出てきた女の子に服を着た仕事が回ってくることなんかあるわけがない。

 

今まで写真や動画が世の中に流出しないこと。デジタルタトゥーが残らないことにこだわって。ひと前で裸になる中ではたぶん一番安全だと思った美術モデルというお仕事をしてきたのだけど。それでだいじょうぶというのはやっぱりわたしの思い過ごしだったんだって。当たり前だけどそうなったらたとえ「幼すぎる美術モデル」というのがうまくいこうがいかなかろうが。わたしのヌードの画像はネット上に残ってしまうし。それはもうわたしの力でなかったことにはできないんだって。

 

もうひとつの可能性。わたしはあくまで沢野さんの提案を拒否して。それでも沢野さんが単独でわたしについての情報を発信したとしたら。拒否したわたしには成功も失敗もなくって。それでもきっとわたしの写真や映像は世の中に拡散されて。デジタルタトゥーとしてネット上に残されていくんだと思います。そして表のルートから情報が得られないならと。ネット民のひとたちはいろんな手段をつかってわたしのプライバシーを暴いていくに違いありません。

 

もしかしたらこの日記のことに行き当たるひともいるかもしれない。そうなったらわたしだけじゃなくって。友だちとか大切なひとの個人情報も。もちろんわたしなりに気づかれないように設定とか変えてあるつもりだけど。ここに書かれたひとたちがわたしがそういう形でヌードモデルをしていたということや。そのひととのかかわりを暴かれることで。「これって自分のことなのでは?」って気づくかもしれない。

 

そのことに思い至ったわたしはブログが削除可能なのかどうか?をすぐに調べました。結果的に削除は可能なのだとわかったのですけど。それにしてもやっぱりこんな日記を調子に乗って書いたりするのは間違ってたんだって思いました。自分がやってることをあくまで秘密にしたいと考えてるのなら、こんなの書いちゃいけなかったんだって。自分の浅はかさに後悔しかなかったです。

 

でもそんなことは今になって考えてもしょうがないことで。この「幼すぎる美術モデル」の計画をやめてもらわないことには何もはじまらない。どんなことをしてでもこの計画を断念してもらわないと。だって沢野さんのことも考えてみたのだけど。彼自身にとっても得になることなんかなにひとつ考えられなかったからです。

 

でも初めて会った時はもう一刻も早く彼から離れることに必死で。結局彼の住んでいるところとかはもちろん。連絡先だって全くわからない状態でした。すぐに行動に移したいのに何もできない。なんて自分は無力なんだろう。そんな泣きたいような気持ちで2日が過ぎた日の夕方。友だちと別れて下宿に帰ろうとしているわたしに沢野さんが声をかけてきました。「まゆちゃん。あのこと。良く考えてくれた?」って。

 

「考えたもなにも。あれからずっと寝られないくらい考えてたんだから」わたしは思わず涙ぐんでいました。そして言いました「とにかくあのお話はなかったことにしてください。どうかわたしをそっとしておいてください」って。下げられるだけ頭を下げて「どうかお願いします。それ以外のことならなんだって言うこと聞くから」って言い続けました。沢野さんが慌てるくらいじっとお辞儀したままの姿勢で。

 

「わかったから頭をあげてよ。ひとが集まってきちゃうよ」沢野さんはわたしの肩をポンポンと叩いてそう言いました。でもわたしは「もうあんなことはしないって言ってくれるまでやめません」って言って地面に膝をつこうとしていました。後で考えても無意識に出た行動でした。沢野さんは「絶対にしない。約束するから土下座なんてしないでくれ。警察を呼ばれちゃうよ」と言ってわたしを立たせました。

 

「どうか落ち着いてよ。それから絶対に手を出したりしないから。どこか静かに話をできるところに行こうよ」と言いました。絶対にしないと約束してくれた。それだけでわたしは全身の力が抜けてその場に崩れ落ちそうでした。涙が止まらなかったけど沢野さんに支えられてその場を離れることにしました。

 

「おいおい。そんな可愛い女の子を泣かせたらダメだぞ」「俺の方が大切にするから。そんな奴ほっといてこっちへおいでよ」集まってきたひとの中から声がかかりました。沢野さんは「お騒がせしてすみません。なんでもないんです。ちょっと行き違いがあったみたいで」と周りに何度も頭を下げていました。

 

沢野さんの約束はほんとうでした。そんなわけで「幼すぎる美術モデル」のお話はあっさりなくなったのですけど。沢野さんとのお話はもう少し続きます。その内容もわたしにはけっこうショックだったので。次の日記にそのことを書こうと思っています。

 

なんかまだるっこしい話でゴメンなさい。

ここまで読んでくださってありがとうございました。

もしよかったら次もお付き合いください。

 

ではではまたね。

 

まゆでした。

 

 

※ 日記に出てくる名前はぜんぶ仮名です。